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2007年4月24日 (火)

露出に関する覚書

露出に関してのご質問をいただいたので、自分自身の頭の整理も兼ねて露出に関する覚書を。決して解説やアドバイスではなく、あくまでも私自身の頭の整理のための覚書です。わかりきっている方はさらっと読みとばしてください。また、不正確な表現があるかもしれませんが、あくまでも私自身の覚書なのでその点はご容赦いただければ幸いです。
写真の三大要素はピント、露出、構図といわれる。このうち露出は光のコントロールであり、同時に色のコントロールでもある。抽象的にはわかっていることだが、光と色の関係を突き詰めて考えてみるのは頭の整理によいと思う。「光のコントロール」ということだが、ここでいう光とはどの光だろうか。光にそんなにいろいろと種類があるのか、と突っ込まれそうだが、端的にいうなら直射光か反射光かということ。露出を決めるのは直射光の状態がどうなのかであって、被写体が「暗い」か「明るい」かといった感覚的な見た目の明るさは反射光によるもの。直射光の絶対的な光の量は曇天時は曇天時なりに、晴天時は晴天時なりに、その時その時で一定だが反射光は物体によってまちまちとなる。
露出を決めるには直射光の状態を見極めることになるが、見極めかたの手法の一つとして反射光を使って間接的に直射光の状態を見極めようとするから話がややこしくなる。
光のコントロールは同時に色のコントロールと書いたが、そもそも光には様々な色が混ざっている。物体に光が当たると、光の中のある色は吸収され、ある色は反射される。黒く見える物体は光の中の全部の色を吸収するので黒く見え、白く見える物体は光の中の全部の色を反射するから白く見える。赤く見える物体は光線の中の赤い光を反射し、その他の色の光を吸収するから赤く見える。以前はよく海に潜って水中写真を撮っていたが、海のなかは水で満たされており、水は光の中の赤い光線を吸収する性質がある。深く潜れば潜るほど太陽光が通過する水の層は厚くなり、赤い光は何かの物体に到達するまでにどんどん水に吸収される。赤い色の珊瑚(赤い光を反射する性質をもった物体)に光が到達したときには太陽光の中の赤い光の多くが水に吸収されてしまっており、赤い光を反射する珊瑚に太陽光の赤い光がほとんど届かなくなる。赤い珊瑚は赤以外の光を吸収するので結果的に反射すべき赤い光が陸上よりはぐっと減り、黒ずんだ色にしか見えない。海の中の見た目の明るさそのものは十分明るく見えても特定の波長の光が水に吸収されてしまっているため、正しい色再現をするには人工光で光を補う必要がある。このため、水中写真ではストロボが必須となる。
露出を決めるときに知りたいのは直射光の状態がどうなのかということなのだが、カメラ内蔵の反射式露出計の場合は反射光を使って直射光の状態を推し量るということになるので、物体ごとにどんな色の光を反射し、どんな色の光を吸収しているかで全体としてその物体の反射率はこれだけだから逆算すると直射光はこの程度で、反射光で測光した場合は実際の直射光の状態にあった露出に引き戻すにはこれだけの補正が必要、というややこしい話となる。
さてさて、どの程度頭の整理ができただろうか。

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コメント

探検隊長さま、何時も拝見しています。               
ピントは今やカメラ機能が発達して人間以上の精度とスピードを獲得したようです。
構図は撮影者の感性が決め手になるでしょう、最後の露出は今も昔もカメラマンの苦労するところです。撮影対象を、いかに見る人に判っていただくか? が露出の決定事項かな~~
昔は入射光を計る露出計が主で反射式の旭光学からでたスポット露出計が垂涎の的でした。
反射光計測の露出計は今も反射率17%(日本人の人肌平均、うろ覚え)だろうか?
ここ1年数ヶ月はデジカメに変わって毎日が戸惑いの連続です。

投稿: イタセンパラ | 2007年4月24日 (火) 19時54分

イタセンパラさん、こんばんは。
構図は感性ですか。露出も相当感性に左右されるところがありますよね。見た目の色と明るさとはまた違った作画意図。奥が深いです。
時々こそっとブログ拝見させていただいてますよ。

投稿: 探検隊隊長 | 2007年4月24日 (火) 21時53分

隊長さん
私には混乱の極みですね。読ませていただいてもよくわかりません、何かモヤがかかったみたいに混乱するばかりです。
何かしらみんな悩んでいるのかなぁという感じはしますが、それが合っているのか、間違った解釈なのか、私には奥が深すぎてよくわかりません。
人によって悩むレベルがかなり違うのでしょうか?プロにはプロのレベルの悩みが、私のような素人には素人なりの悩みがあるんでしょうか?!
隊長さんの写真はとても明確で、空バックでもケリの色ははっきりと出ていますね。マニュアルと書いておられましたが、あの時の撮影条件を教えてほしいものです、なんて思ってしまい、ここに書いてしまいました。
よろしくお願いいたします。
悩む素人です。


投稿: ejisan | 2007年4月24日 (火) 22時44分

混乱しましたか。やや抽象的な話だったかも知れませんが、光線状態が変わらなければ被写体が変わっても露出は同じということを再確認するための覚書です。
ケリの撮影時の天候は薄曇り。青空は出ていましたが薄い雲がかかってやや白っぽい青空。ところどころはっきりとわかる雲が出ていましたが、それでも全体に暗いという状況ではなく、飛びものを撮るのに十分なシャッタースピードは確保できそうな状況。
サンニッパを単体で使い、ISO感度200、絞りはF4、シャッタースピードは1/2000秒での撮影でした。マニュアル露出での設定ですから絞りとシャッタースピードは別々に手動で設定します。ケリの飛翔に合わせてカメラを動かすのにつれて背景が変わっても絞り値とシャッタースピードは固定で変わりません。
絞りF4で絞り優先オートで撮った場合を想定してみてください。空抜けの状態だとシャッタースピードは1/2000秒よりもずっと早くなるはずです。そのままだとケリの羽の黒い部分はアンダーになります(わかりやすくこう書いていますが、アンダーになるのは黒い羽の部分だけでなく空部分も含め画面全体がアンダーになるのです)。そこでプラス補正をするとシャッタースピードは下がってゆきます。プラス補正をしていってシャッタースピードが1/2000秒まで下がったところで適正になったとします。
逆に絞りF4での絞り優先オートで背景が黒いトタン板の場合を想定すると、背景が暗いのでシャッタースピードは1/2000秒よりも低速を示すはずです。このまま撮るとケリの羽の白い部分は露出オーバーになります(ここも羽の白い部分だけがオーバーになるということではなく、画面全体がオーバーになるのです)。そこでマイナス補正してゆくとシャッタースピードは上がってゆきます。マイナス補正をしてシャッタースピードが1/2000秒になったところで適正になったとします。
背景が違っても最終的には露出補正の結果、同じ絞り値とシャッタースピードで適正になるのは、直射光はどちらの状況でも一緒だからです。反射光で測光するから反射率の影響によりカメラが勝手に明るいとか暗いとか判断してシャッタースピードを変えてしまい、プラス補正やマイナス補正が必要になるのです。飛んでいるケリの飛翔に合わせてカメラを動かしている間に背景の変化に合わせて補正をすることなどできません。そこでマニュアル露出となるわけです。
私も悩む素人です。

投稿: 探検隊隊長 | 2007年4月25日 (水) 10時00分

隊長さん
ありがとうございました。
このような撮影条件を教えていただくと、とても参考になります。そこで、ひとつ教えていただきたいのですが、
『全体に暗いという状況ではなく、飛びものを撮るのに十分なシャッタースピードは確保できそうな状況。
サンニッパを単体で使い、ISO感度200、絞りはF4、シャッタースピードは1/2000秒での撮影でした。』とありますが、今回のこの設定は隊長さんの長年の経験から設定されたものでしょうか? それとも、考え方の根拠や順番のようなものがあるのでしょうか?

ここからは私の勝手な推測です。目を通してみてください。
例えば、飛びものを止めて撮りたいので1/2000秒ととりあえず決めて(ご経験から)、シャッタースピード優先でF値をみると(ただこの時、どこの被写体で露出をみるのでしょうか? 空? けり? 緑色?、その辺がわかりません) 4と出たので、マニュアルにてそう設定されたのでは?と思いました。
マニュアル設定下であっても、露出補正はとくにされていないのでしょうか? ±0 での撮影でしょうか?

ISO感度はなぜ200なんでしょうか? これも経験からでしょうか? ISOは100でも200でも400でも仕上がりが良ければ結果オーライで、このISOでなければならないということはないと思いますが、良く撮れていれば100でもいいし、少し曇りだったので200と設定したということでしょうか? もし、少しアンダーなら200や400に上げるということもあり得るというでしょうか? ISOについては、このような理解をさせていただいてもいいのでしょうか?

わかっていない者が質問をするとこうなるという好例かもしれませんが、よろしくお願い致します。

投稿: ejisan | 2007年4月25日 (水) 16時54分

絞りとシャッタースピードはある程度は経験での判断です。経験での判断で決めた露出で試し撮りしてみて修正することは容易です。
サンニッパの開放F値は2.8ですが1段絞ってF4でどれくらいのシャッタースピードが確保できるかを探ってみました。絞りF4にしたのは飛びもの撮影なのでピントずれも生じ易いことを考えてのものです。だから、まず絞りを先に決めました。シャッタースピードは1/2000秒くらいほしいと思いましたが、快晴ではなかったのでISO100だと1/2000秒はアンダーになると考えISO200にしました。もっと曇っていてISO200でも1/2000秒のシャッタースピードが得られない場合にはISO400にするか絞りを開放のF2.8にするかのどちらかの選択(多分その場合は後者を選択したんじゃないかと思います)をすることになります。

投稿: 探険隊隊長 | 2007年4月25日 (水) 18時23分

隊長さん
ありがとうございます。
そうですねぇ、やはり色々と試行錯誤されているんですねぇ。
でも絞りを先に、とは思いませんでした。そういうアプローチもあるんですねぇ、勉強になりました。
私は今まで1/1000とか1/2000というのは未体験ですので、さっそく試してみたいと思います。
ありがとうございました。

投稿: ejisan | 2007年4月25日 (水) 20時12分

ケリの飛翔程度ではシャッタースピードを先にという考えはないですね。
これがカワセミなんかだとまた話は違ってきます。カワセミのホバリングなんかはシャッタースピードをあげすぎると羽が完全にとまってしまって面白くないのでわざとシャッタースピードを遅めにして羽だけぶらすというのが一般的だと思います。そういう場合にはシャッタースピードをまず決定することになりますね。

投稿: 探険隊隊長 | 2007年4月26日 (木) 11時16分

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