1.6倍AFテレコンバーターのテスト
梅田の中古カメラ屋さんでニコンの古~い1.6倍テレコンを入手してきたので、自宅の窓辺からテストしてみた。このテレコンはTC-16ASという型番だが、少し変り種のAFテレコンバーターである。AFとついているのがミソで、これはオートフォーカスレンズに装着するとAFで動作するという意味ではなく、マニュアルフォーカスレンズに装着した場合にテレコン自体がAF駆動してオートフォーカスで撮れるという変なレンズなのだ。ニコンの銀塩時代にオートフォーカスカメラが発売されだした直後に、マニュアルフォーカスレンズのレンズ資産を活用できるようにと用意されたテレコンである。
テレコンバーター自体がAF駆動するといってもテレコン本体でのAF駆動範囲はその大きさからしても限りがあるため、普通のオートフォーカスと全く同じというわけには行かない。このテレコンを使う場合は、マスターレンズでピントリングによりおおよそのピント合わせを行い、最後の合焦をテレコンのAF機能を使って行うという用い方になる。
こう言うと「な~んだ」、ということになりそうだが、デジスコユーザーならスコープのピントノブでおおよそのピント合わせを行ってから、コンデジのAF機能で最後のピント合わせを行うという使い方はむしろなじみじゃないだろうか。野鳥撮影ではオートフォーカスレンズでもなかなかピントが合わずにレンズ駆動を繰り返していらいらする場面が多々ある。レンズの駆動範囲をリミッターで制限しても被写界深度が極浅い超望遠レンズではリミッターでの駆動範囲の制限はほとんど意味をなさない。それならばむしろ、おおよそのピント合わせはマスターレンズのピントリングで手動で行い、最後の厳密なピントあわせだけをAFテレコンバーターのオートフォーカス機能を使って行うというというほうが実用的だったりする。もうひとつ、このテレコンを使った利点がある。それは、大きなマスターレンズをAF駆動させるのではなく小さなテレコンを僅かな駆動範囲だけAF駆動させるため、カメラ本体のモーターによる駆動であるにもかかわらず合焦が非常に早いということだ。最新の超音波モーター内臓AF-Sレンズよりこのテレコンを使ったほうが合焦が早いという話を聞いたことがあるが、実際、マスターレンズでピントの荒合わせを行った後のAF合焦は極めてスムーズだ。テレコン自体のAF駆動範囲は本当に極僅かしかないので、マスターレンズがAFである場合のようなピントの迷いによる大きなレンズの繰り出しがないのもよい。
このテレコンは仕様上は合成F値がF5.6まででオートフォーカスが使えるということになっているが、ED500mm/F4Pに装着してみたところ、合成F値はF6.4となるもののオートフォーカスは使えた。野鳥撮影での使用を考えた場合、ED400mm/F3.5と組み合わせれば非常に魅力的になると思われる。ED400mm/F3.5はマスターレンズの重さが2.8キログラムと大砲の範疇に入るレンズとしては極めて軽量で、レンズ長もED500mm/F4Pより10センチも短い。D2Xのクロップモードで使えば35ミリ換算800mm、1.6倍テレコンとの組み合わせで1280mmとなる。ED400mm/F3.5とTC-16ASの組み合わせというのは山行きには最強ではなかろうか。にわかにED400mm/F3.5が欲しくなってきた。
いずれもED500mm/F4Pに装着したクロップモードの撮影で、35ミリ換算焦点距離は1600ミリ相当となる。
このテレコン入手の理由は単にAFが使えるということではなく、1.4倍テレコンよりももう少しだけ倍率の高いテレコンが欲しかったという点もある。最新のAF-S用1.7倍テレコンは物理的にED500mm/F4Pには装着できない。ケンコーの2倍テレコンは流石に画質の劣化が大きい。そこでこのテレコンに目をつけたというわけだ。中古で税込み9975円は大変お買い得。
因みに、ニコンのデジタル一眼でこのテレコンが使える(AF機能が使える)のはD2HやD2Xなど、D一桁台のカメラに限られる。
(補足説明)
このテレコンは古いマニュアルフォーカスのレンズ資産を活用するために用意されたものだが、最新のAF-Sレンズに装着するというへそ曲がりな使い方も可能だ。最近のニコンのAF-Sレンズではマスターレンズ側にフォーカスモード切り換えスイッチがあり、A(オートフォーカス)、M(マニュアルフォーカス)、A-M(オートフォーカスからピントリング操作で即座にマニュアルフォーカスに移行モード)の3つのモードのなかから選択できるが、マスターレンズ側のフォーカスモードをMにしておき、カメラ側のフォーカスモードはオートフォーカスにしてこのテレコンをつなぐと、テレコンのみのAF機能が作動する。
マスターレンズ自体がオートフォーカスなのになぜこんなへそ曲がりなことをするのか。その目的はズバリ、チョウゲンボウなどの飛びもの狙い。マスターレンズのオートフォーカスを使うと、フォーカスが迷走してレンズが大きく動いたときファインダー内が完全にアウトオブフォーカスとなり被写体がどこへ行ったかわからなくなってしまう。半押しした途端に鳥を見失ったという経験はこれまで数えきれないほどある。
テレコンのオートフォーカスは先にも書いたようにフォーカス駆動範囲が極めて狭く、アウトオブフォーカスの状態でもマスターレンズでピントの荒合わせがされていれば、被写体を見失うほどにぼけるところまでレンズが駆動しない。マスターレンズでしっかりとピントの荒合わせをすることが前提になるが、意外とこちらのほうが飛びものでは歩留りがいいかもしれない。
| 固定リンク
コメント
レトロなモノを買われましたね。(^^;
それ、私も持ってます。D200ではAF作動しないので、最近使ってないのですが、銀塩カメラ用に置いてあります。
このテレコンでAFとの事ですが、望遠レンズのようなピントリングの移動距離が大きい場合かなり慣れないと、簡単にピント合わないですよ。
AFのテレコン使った方が、早くて正確だと思います。
標準とか広角レンズなら、無限遠へ合わせておけば、ほぼ全域でAFできますが・・・
開発の主旨もこれらのレンズに付ける事を想定していてますね。
ただ、MFの500でAF使えるのは便利。
体調が悪く、目がショボショボして、ピントきてるのかどうかよく判らないような時などに重宝していました。
PS、SSでも修理受け付けを終了してますし、ボディーによっては装着すらできないなど制約も多く、これから購入を考えてる人にはお勧めできません。
投稿: kuwa | 2006年11月 2日 (木) 18時09分
ゴーヨンPでの使用がメインになりますので、基本はあくまでもマニュアルの手動でピント合わせします。ただどうしてもピントの山がつかみづらい状況があるのでそのときには重宝するんじゃないかと期待してます。
飛びものでの使用は仰るとおり荒合わせまでに手間取ってしまうかもしれませんね。上空飛んでる鳥ならマスターレンズのAFでもそれほど迷いはないから素直にマスターレンズのAF使うほうがいいのかもしれませんが、とりあえず時間があるときでも試してみます。
鳥がスーッと降下してきて地面に近づくにつれてニコンのAFは全く役立たずになります。
投稿: 探検隊隊長 | 2006年11月 2日 (木) 20時07分