野鳥撮影とスポット測光
難しい話をするつもりはないですが、今日は野鳥撮影時のスポット測光についてちょっとだけ書いてみます。
スポット測光は評価測光や中央部重点測光とは本質的に違います。評価測光や中央部重点測光は多かれ少なかれ、カメラの内蔵プログラムで露出を計算するというもので、メーカーごとのプログラムの違いで結果がかなりばらつくが、スポット測光というのは言ってみればカメラ内蔵の純粋な露出計みたいなものなので、光を計る「道具」にすぎません。単にスポット測光ポイントの光の状況を計る道具なので、使い方をよく分かっていないと全然意図した結果になりません。
やっかいなことにメーカーのサイトが誤解をあたえるような説明をしています。
以下に引用するのはパナソニックのサイトにあった撮影テクニックの説明の一つです。スポット測光について説明しています。
『露出オートで撮る場合、測光方式は「スポット測光」に設定しましょう。通常の「評価測光」は、画面全体の明るさから適正露出を計るため、小さな鳥を撮るときなどに肝心の鳥が明るく(または暗く)なりすぎてしまうこともあります。
「スポット測光」は、画面中央に表示されるスポット測光ターゲット上の被写体から露出を決めるため、狙った鳥に最適な露出で撮影できます。』
上記のパナソニックサイトの説明で、スポット測光なら狙った鳥に最適な露出で撮影できると書いてあるのはスポット測光について読者に大きな誤解をあたえます。おそらく筆者がスポット測光を理解していないわけではなく、行間をはしょった説明になっているため、上記の説明だとスポット測光では少なくとも測光ポイントだけはいつも適正露出が得られるような誤った印象をあたえる結果となっています。
スポット測光によるカメラ内蔵の露出計は、あくまでも反射率が18%の被写体をスポット測光した場合にだけ、「露出補正なしに」適正露出になるように設計されているので、測光ポイントの反射率が変われば露出補正なしに適正露出になることはありません。よく例に出されるように、雪のハイライト部分は反射率が極めて高いので、このハイライト部分をスポット測光すればカメラ内蔵露出計は明るすぎると勝手に判断して絞り優先オートの場合、シャッタースピードを速くしてしまいます。結果として、露出補正しないとかなりアンダーになってしまいます。
ここからが本題。野鳥撮影の場合、被写体の野鳥の色は様々なので、野鳥そのものをスポット測光すると野鳥の色(野鳥のどの部分を測光するかによっても色が異なる)によって反射率はまちまちで、どれだけの補正が必要かなんてなかなか判断つきません。
幸いなことに野鳥撮影の場合、たいていは構図の中に何かしら緑の葉っぱなどが入っていることが多いです。透過光で透けた葉っぱなどは例外ですが、そうでない場合、順光の光を受けた緑の葉っぱは、これをスポット測光すると「露出補正なしで」適正露出になります。
緑の葉っぱなどでスポット測光したのち、その露出値(絞りとシャッタースピード)でマニュアル露出にするのは手間がかかって、その間に野鳥が逃げてしまうおそれがあるので、緑の部分を測光したらすかさずAEロックボタンを押します。その際、AEロックはボタンをワンプッシュすると以後ボタンを押し続けなくとも露出が固定され、シャッタレリーズでリセットされる(AEロックが解除される)ように設定しておきます。AEロックボタンが同時にAFロックも兼ねている場合は、設定でボタンの機能をAEロックだけに変えておきます。
こうすると結構機動的に野鳥撮影でスポット測光が使えます。枝止まりの野鳥を見つけたらファインダー内の緑の部分にスポット測候枠を向けてすかさずAEロックボタンをワンプッシュし、AF枠を野鳥に向けてフォーカスを合わせてシャッターを切る。一見めんどくさそうですがやってみれば意外と簡単です。
ついでに言うなら、デジスコ撮影では中央部重点測光で露出補正はマイナス0.7補正がよいとよく言われていますが、この方法だと大きく露出をはずすおそれがあります。
ファインダー枠の中央部が反射率の比較的高い色で占められている場合、カメラは明るすぎると判断してシャッタースピードを必要以上に速くしてしまいます。このままだとアンダーになるのに、さらにマイナス0.7補正するわけですから結果は超アンダーになってしまいます。マイナス0.7補正するのはコンデジに使われる小さな撮像素子のラチチュードが狭いことを考慮したもので、その考え方自体は間違っていませんが、ファインダーの中央部の色分布(言い換えればファインダーの中央部の平均的な光の反射率)を考慮せずにいつも中央部で測光という撮りかたが間違っているのです。
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コメント
こんにちは、
きれいな写真を撮られるんですね。
スポット測光について書かれていましたので、質問させてください。
デジタル一眼レフカメラで、『スポット測光をおこない写真を撮る』というプロセスは、
1.カメラの測光モードダイアルをスポットの『・(丸ポチ)』マークに合わせて、
2.ファインダー内で選択したスポット測光枠を被写体に向けてシャッターを半押し(途中ですが、ここで質問です-この行為がスポット測光をしているということなんでしょうか?)して、露出を±0に設定し、
3.その後、経験からの露出補正(反射率が18%の被写体であれば露出補正なし、雪のハイライトであればプラス補正など)をかけて、
4.AEロックボタンを押して、AF枠を被写体に向けてフォーカスが合ったところですばやくシャッターを切る。
ということでいいんでしょうか?
長々となりましたが、よろしくお願い致します。
投稿: 江島 博康 | 2007年2月18日 (日) 12時23分
江島さん、こんにちは。
スポット測光はスポット測光枠を向けたポイントの反射光を測光します。シャッター半押し状態で測光されます。測光とは本来空間を満たす光の状態を測るものですが、カメラ内臓の露出計は反射式露出計といって光を直接測光するのではなく反射光を測る仕組みになっています。
反射光を測るため、測光ポイントの反射率によって実際の光の状態よりも暗いとカメラが判断してしまったり、明るいとカメラが判断したりしてしまうことがあります。これを補正するのが露出補正です。
明るいか暗いかということは相対的な概念ですので何に比べて明るいのか、暗いのかという指標が必要になります。露出計は反射率18パーセントの物体をニュートラルとしていますので、これよりも遥かに反射率の高い雪をスポット測光した場合ニュートラルな物体を測光したよりもずっと明るいと判断してしまってシャッタースピードを必要以上に早くしてしまい結果として超アンダーになってしまうため大幅なプラス補正をすることになります。
スポット測光での撮影の手順はいろいろあります。私がAEロックを使う方法を提示したのは被写体が野鳥のように動き回るためです。風景写真のようにメインとする被写体が動かず、構図も固定の場合は次のような手順のほうがいいと思います。
1.露出モードを絞り優先モードにする。
2.測光モードをスポット測光にする。
3.撮影しようとする画角の中で比較的露出の安定したポイントを見つける。
4.3のポイントで必要な露出補正をしてスポット測光し、そのときのシャッタースピードを記憶する(反射率18パーセントに近い被写体なら補正は必要ないので補正なしで測光し、シャッタースピードを覚えます)。
5.構図を戻してシャッターを半押し、4で覚えたシャッタースピードになるまで露出補正をする。
上記の手順ではAEロックはしていませんが、同じ風景を同じ構図でじっくりとる場合、一度1~5までの手順を踏めば、時間の経過によって光線の状態がかわってもカメラが勝手にシャッタースピードを変えてくれるというメリットがあります。
投稿: 探検隊隊長 | 2007年2月18日 (日) 16時50分
こんにちは、ありがとうございました。
下記に示しました、今回教えていただいたプロセスの中で、わからない点がありますので、教えてください。
1.露出モードを絞り優先モードにする。***わかります。***
2.測光モードをスポット測光にする。***わかります***
3.撮影しようとする画角の中で比較的露出の安定したポイントを見つける。***わかるような気がします***
4.3のポイントで必要な露出補正をしてスポット測光し、そのときのシャッタースピードを記憶する(反射率18パーセントに近い被写体なら補正は必要ないので補正なしで測光し、シャッタースピードを覚えます)。
***必要な露出補正をしてスポット測光し*** とありますが、どういうことでしょうか? 通常はスポット測光した後に露出補正と思いますが***
5.構図を戻してシャッターを半押し、4で覚えたシャッタースピードになるまで露出補正をする。***構図をもどしてというのは、ズームをかけてスポット測光後のプロセスの意味でしょうか?***
以上、よろしくお願い致します。
私は、まだ、きちんとスポット測光の内容がわかっていないのだと思います。
特に、シャッターを半押ししてスポット測光したあとのプロセスがよくわかりません。
ご迷惑とは思いますが、よろしくお願い致します。
投稿: 江島 博康 | 2007年2月19日 (月) 17時48分
話をわかりやすくするために、カメラのスポット測光枠は上下左右に動かせず、ファインダー中央固定としましょう。
これから撮ろうとする構図では画角の中央にメインの被写体となる花があり、その花は複雑な色をしていて露出補正値の判断が難しいとします。撮ろうとする構図の右上に雪があるとします。
雪の部分でスポット測光したときの経験上の露出補正値を仮にプラス1だと仮定します。
雪の部分をスポット測光するためにカメラのスポット測光枠を雪の部分に合わせます。スポット測光枠がファインダーの中央に固定なので画角の右上にある雪の部分にスポット測光枠を向けるためには少し構図をずらさなければなりません。雪の部分にスポット測光枠を合わせてスポット測光するとき、知りたいのは雪をスポット測光したときに適正露出となる絞りとシャッタースピードです。絞り優先オートで撮っているので絞り値は設定した値で変わりませんので、知りたいのはシャッタースピードということになります。また知りたいのは雪の部分でスポット測光したときの適正露出のシャッタースピードですから露出補正をしたうえで表示されるシャッタースピードになります。雪の部分にスポット測光枠を合わせてシャッター半押しを保持してから露出補正ボタンを操作してプラス1補正しても、先にプラス1補正しておいて、その後にシャッターを半押ししても表示されるシャッタースピードは同じはずですのでここでの手順はどちらが先でも構いません。仮定のプラス1という補正値は「雪の場合はこれだけ、赤い花の場合はこれだけ」というように予め経験上把握している補正値なので先に補正しようがあとで補正しようが補正すべき値はいっしょです(スポット測光を使いこなすには被写体の色ごとに必要となる露出補正値を把握しておくことが大前提となります)。
この状態で表示されるシャッタースピードを覚えます(仮にここでAEロックすれば覚えたシャッタースピードで固定され、そのあと構図をもとに戻してメインの花をファインダーの中央に置いてもシャッタースピードは固定されたままになりますね)。
雪の部分で必要な露出補正をしたうえでスポット測光した際のシャッタースピードを覚えたら、メインの被写体である花がファインダーの中心にくるようにずらした構図をもとに戻します。露出補正はプラス1の設定のままです。その状態で(AEロックはしていないのが前提です)シャッターを半押しすると雪の部分で測光したときとは当然違うシャッタースピードが表示されます。通常は雪の部分よりも花の方が反射率は低いはずですので、雪の部分で測光した際のシャッタースピードよりも遅いシャッタースピードが表示されているはずです。そこでシャッター半押し状態を保持したまま露出補正ボタンを操作し、雪の部分で測光した際に記憶したシャッタースピードになるまで露出補正します。雪の部分で測光する際にプラス1補正で測光していますが、測光枠を花に向けてマイナス側に0.7補正したときにシャッタースピードが雪で測光したときと同じになったら、補正値はプラス1とマイナス0.7で差し引きプラス0.3となっているはずです。
結果としては、雪の部分で露出補正プラス1でスポット測光し、その状態でAEロックし、構図を戻して撮影したのとなんら変わらないことになります。
但しAEロックの場合だと時間の経過で光の状態が変わった場合は一連の手順をやり直さなければならなくなるのです。
AEロックしない方法の場合、雪の部分で測光し、シャッタースピードを覚え、構図を戻してシャッタースピードが雪の部分の時と同じになるように「さらに」露出補正をすれば、その後は同じ花を撮っている限り光の状態が途中で変わっても(光の状態が途中で変わればシャッタースピードも変わりますが、これは構図をずらしたことによるシャッタースピードの変化ではなく光の状態の変化に伴うシャッタースピードの変化ですので、このときは露出補正ボタンを触りません)、絞り優先オートでカメラが光の状態の変化に合わせたシャッタースピードに勝手に変えてくれるので一連の手順を繰り返す必要がないわけです。
投稿: 探険隊隊長 | 2007年2月19日 (月) 19時43分
早速にありがとうございます。
まだ一読しただけですので、よく理解できておりません。
自分のカメラで実践してみます。
ありがとうございました。
その上で、なお、理解できないところがあれば、再度、お願いするかも・・・。
ご迷惑とは思いますが、何卒よろしくお願いいたします。
投稿: 江島 博康 | 2007年2月19日 (月) 21時10分
江島さん
わからないことがあればご遠慮なく聞いてください。私のわかる範囲であればおこたえします。
スポット測光のし方について最初に頂いた質問に対する答えがもしかしたら少し誤解を招いているかもしれませんので補足しておきます。
スポット測光するとき測光枠を測光ポイントに向けてシャッターを半押しするということが「測光」するということか、という質問を最初に頂いてましたが、カメラの内蔵露出計はシャッターを半押ししなくとも測光枠を測光ポイントに向けるだけで測光しています。
ただ、ファインダー内の露出インジケーターやカメラの表示パネルは半押ししたときにデーターが表示されるようになっていて(少なくとも私の持っているカメラではそうです)、シャッターを半押しすれば絞り値とシャッタースピードが表示され、シャッターから指を離しても数値は5~6秒間表示され、そのあと消えます(これは単にバッテリー消費を抑えるためだと思います)。半押ししたあと、シャッターから指を離し、絞り値とシャッタースピードがまだインジケーターに表示されている間にカメラを動かすと数値が変わるのがわかるはずです。つまり半押ししたときに初めて測光するのではなく、常時測光しているのですがインジケーターの数値表示が一旦消えると、半押ししないと再表示されないということに過ぎません。
投稿: 探検隊隊長 | 2007年2月19日 (月) 21時53分
ありがとうございました。
紙とエンピツを持ち出し、何度も何度も読んでは書き出し、読み直しては書き出し、繰り返して、整理してみました。
ステップを9段階くらいに整理して、自分のカメラでやってみました。
あ~!!っという感じで、これがスポット測光で撮るということなのかぁっと理解できたような感じに浸っています。
本当にありがとうございました。
今度の休日に実践してみようと思ってます。
また壁にぶつかると思います。その時は投稿しますので、また教えてください。
ありがとうございました。本当に勉強になりました。
投稿: 江島 博康 | 2007年2月20日 (火) 21時32分
はじめまして、露出に悩む初心者です。
鳥を撮ることは、ないのですが、きれいな写真なので、たびたび拝見させていただいております。
スポット測光についてわかりやす書かれてましたので、少し質問させてください。
私のカメラ(EOS kiss dijital X)の測光モードには、スポット測光がなく、測光領域が1番狭いモードは部分測光(測光領域約9%)になります。これだと、たとえば、18%に近い緑色の葉っぱで測光したとしても、違う反射率の被写体が測定領域に入ってしまい正確な露出が得られなくなるような気がしますが、やはり測定領域は狭いに越したことはないんでしょうか?
この機種は、逆光などの場合を除き、評価測光で撮影し、モニターで確認して露出補正し再び撮るという割り切った撮り方しかできないのでしょうか?
調べたところによるとkissX3のスポット測光は、測定領域約4%、EOS50Dで約3.8%でした。買い替えの時期なのかなと思い始めています。
私が、主に撮っているものは、子供、街や公園などでちょっと気になったものや風景などです。そんなにシビアに適正露出にこだわらなくてもいいような気もしますが、白飛び、黒つぶれの写真ばかりで私の前に立ちはだかる"露出"という厚い壁を克服したいので、よろしくお願いします。
投稿: tetu X | 2009年11月 5日 (木) 16時34分
tetu Xさん、はじめまして。こちらのブログをご覧頂いているとのこと、ありがとうございます。
お使いの機種の件ですが、測光領域の多少の広狭の違いはあっても「部分測光」がいわゆるスポット測光モードに該当するとお考えになってよいと思います。
呼び方はメーカーやカメラによっていろいろありますが平均測光や中央部重点測光ではある程度の領域の平均値をとる際にカメラ固有の処理の特性が出てしまうので測光精度にばらつきが出やすいです。スポット測光はカメラに内臓している単体露出計のようなものなので、きちんと測光すれば正しい結果が出ると思います。
測光領域が他の機種に比べて広いという点でお悩みのようですが、測光は必ずしも実際に撮影される位置で測光する必要はありません。葉っぱで測光する際に、葉っぱが小さいのであればぐっと近づくと測光領域が葉っぱの中に納まるのではないでしょうか。
野鳥撮影の場合、鳥がとまっている木の枝まで近づいて測光するというようなことはできないわけですが、被写体が町の風景などであれば測光しやすいように被写体に近づくことは容易だと思います。
また、実際に撮影するのと同じレンズで測光しなければならない必然性もありません。
被写体に近寄れないような場合に一時的に焦点距離の長い(画角の狭い)レンズに付け替えて測光しても全く構いません。
参考になれば幸いです。
投稿: 探検隊隊長 | 2009年11月 5日 (木) 19時21分
早速のアドバイスありがとうございます。
測光したい被写体が小さければ、ズームして大きくすればよかったんですね。
この方法なら測光領域の広さは、あまり関係ないですね。
まさに、目から鱗のような感じです。気が付きませんでした。ありがとうございます。
今週末にでも、この測光方法を実践してきます。
また、壁にぶつかったら質問させてください。
これからも素晴らしい写真期待してます。
投稿: tetu X | 2009年11月10日 (火) 19時32分
tetu Xさん、いい写真が撮れるように互いに頑張りましょうね。
そうそう、最初のご質問のなかで白飛び、黒つぶれのことを書いておられましたが、白飛びしない、黒つぶれしない、ということと適正露出とはイコールではありません。
理論上は白い部分に適正露出なら黒い部分にも同時に適正露出になります。それが理論どうりにならないのはカメラの階調表現の幅の限界です(どんな高級なカメラを使っても)。なので、明暗差が極端に大きく、カメラの階調表現能力の範囲に収まらない状況ではどっちを犠牲にするか自分で選択するしかないですね。
投稿: 探険隊隊長 | 2009年11月11日 (水) 14時25分